2013-10-06 21:47 | カテゴリ:横浜
ジャンル:ニュース テーマ:フリーメイスンリー
まあ以前このブログでも紹介しているわけですが、それで読んだりしている人も居なさそうですが、読み終わったので内容と感想を書いていこうかと思います。

著者の徳本栄一郎さんと言う方はこのノンフィクションの前に同様のノンフィクションとして英国機密ファイルの昭和天皇という本を新潮社から出していて、その取材の際にフリーメイスンリーについて知りこの様な本を出したそうです。経歴は佐賀県出身の方で祖父が海軍主計官と言う事で、その関係があるのかどうか分かりませんが、イギリスでロイターの特派員を務めていて、その後フリーライターとなっているそうです。一見して世界各国を取材で飛び回っているのですが、その経費が本の売り上げだけで賄われているのかどうかは若干疑問を感じるところかもしれません。

いわゆる日本で出版されている本の中での数少ないブラザー片桐三郎氏の本にならってフリーメイスン、フリーメイスンリーと表記している本であり、また表紙にブラザーマッカーサーの写真とスコティッシュライトのシンボルが描かれているという稀な本となっています。

1945年日本占領―フリーメイスン機密文書が明かす対日戦略1945年日本占領―フリーメイスン機密文書が明かす対日戦略
(2011/02)
徳本 栄一郎

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出版されたのが東日本大震災の直前という事で、アマゾンのレビューにも印象的なものがあったりしました。
帯もなかなかすごく、日本人の精神を根底から改造せよ――。第一次資料が物語る衝撃の事実!となっていて、なかなかまあ端的に言って横浜ロッジのフリーメイスンリーの広報の本みたいなところなんですが、期待が高まる煽りと言ったところでしょうか。以前このブログでも紹介した、檀原照和さんによる平凡なフリーメイソンの非凡な歴史もほぼ同時期にさらに横浜ロッジの歴史に特化した内容となっており、ともに横浜ロッジの活動と言う事になるのだと思われます。まあもちろんこのブログもその一端と言う事なのだと思いますが、今回の本が1700円となかなかの値段となっており、まあ当ブログも再びいつか有料化を検討したいと思っていますが、なかなか内容的に難しいのかもしれません。

内容的にどうなのかと言うと、まあなんというかなかなか読むのに2011年から2年近くかかったというところでお察しいただきたいところかもしれません。主な内容の中心は何かと言うと基本的に天皇の終戦工作や戦後のブラザーマッカーサーのフリーメイスンリーの活動や日本人への門戸開放の経緯で、確かにHouse of the Templeやロックフェラー財団、スイス銀行と言った公開されている図書館に直接連絡をとって一次資料に当たるという手法と、ブラザーマッカーサーの側近やその他のフリーメイスンに話を聞くと言ったやり方は客観性は高いんでしょうが、それで結局どうなのというところで、最後に横浜ロッジの隣にあるYC&ACの敷地にA級戦犯の遺骨がまかれた可能性が高いという話で終わっていたりして、どうもまあ作者の人はほぼブラザーとして遇されているわけですが、どうもフリーメイスンリー自体に対する興味や加入の意志は無いようで、どうもだからどうなの?という内容で終わっている感じになっています。結局この徳本栄一郎氏の立場というものになるのでしょうが、どうもロイターのロンドン特派員であったという経歴などからもほぼエージェントとして仕事をしている感じで、その関係でフリーメイスンになってもいいよ位な感じでイギリスのエージェントとしてこういう本を出版する経緯となった感じでしょうか。途中でこの前著で大分書いたような白洲次郎氏についてもだいぶ書いていますが、どうも彼がフリーメイスンとは遠い存在であることを確認したような感じから、大分否定的に書いていて、色々フリーメイスンリー関係の資料を知り幻滅したみたいな感じでしょうか。またかなりフリーメイスンに近い感じの毎日新聞の記者についても書いていて、エージェントとして結局インドで客死した経過を見て、御自分も単なるエージェントとして動いていたらヤバいみたいな感じを知ったような感じでしょうか。

とまあ一次資料に当たったという内容であるために、ご本人の意図がなかなか推察しづらく上記のような感想になってしまうのはしようが無いのだと思われます。ただ単に読むと終戦後の米兵の日本でのロマンスの話や、昭和天皇が終戦前に赤十字に寄付を行って財産の保全に動いていたとか、ブラザーマッカーサーのフリーメイスンリーでの活動やフィリピンと日本のグランドロッジの活動や、ブラザーリビストが昭和天皇のフリーメイスン加入を画策したとか、ある意味内容的には過去に陰謀論者とされる赤間剛氏の昭和天皇についての本昭和天皇の秘密や、鬼塚英昭氏の天皇のロザリオ 上巻 日本キリスト教国化の策謀などの方が極めて狭い範囲で情報を収集しているとはいえ、個人的には文章の迫力もあり面白い内容であるのではないかと思いました。まあそうした日本では陰謀論に分類されるような内容について実はそれが史実なんだよとアメリカやイギリス、スイスなどの海外の財団などは追認したというものになるのかと思いますが、結局それを書いた方が最後にA級戦犯合祀について同情的な触れかたをしているような事で、全て台無しにしているような虚無感が残るものとなっているところでしょうか。

というわけで目新しい内容は一切無いのですが、実際陰謀論とされてきた内容を一次資料にあたって権威づけしているという、なんともちょっと卑怯者的な、いわゆる海外マスコミで自らの身を第一に守ることに重点を置いた、結果的に八方美人的な内容となっているかと思われます。まあ恐らく本当に面白い内容などはその他にいくつも個人的に保存しておいているのだと思いますが、3.11地震の直前に出版されたというフリーメイスンリー関連本というものであり、あまりにセンセーショナルな内容でも逆に反感を買うだけであり、これまでの陰謀論を裏打ちするような冷静な内容にするのが最も効果的という程度を加減したものであるかと推測されました。

あとは気になったのがご本人が自然と英会話がスムーズな流れとなっているようなのですが、どうもそれがどの程度までの理解であるのかというところがなかなか掴めないというか、実際あまり分かっていないのではないかというところが多く感じられ、また世界各国の取材旅行について必ず優雅な一シーンを挟むのが何の意味があるのか全く不明で、結局フリーメイスンリーについて一般人以上に理解しているものではなく、また実際にはフリーメイスンと全く同じように遇されていながらそれについて自身はなんともコメントをしていない所が、どうも残念というかなんとも消化不良を感じさせずにはいられない所でしょうか。

取材の過程で出てくるほとんどの人がフリーメイスンであり、恐らくイギリスでの徳本氏の師として関わる人物も恐らくフリーメイスンなのですが、本当に最後のところがA級戦犯の遺骨の話で終わるところは非常に残念という他ないというところでしょうか。
興味のある人は戦中戦後の日本におけるフリーメイスンリーの活動について日本語で書かれた資料としてさらに調べたり、まとめたりするのに参考になる資料となるかと思われますので、実際は英語の資料に当たる方が良いかと思いますが、参考にされると様々なきっかけになるかもしれません。この手の本は本当にロスト・シンボルやダヴィンチ・コードの翻訳などもそうですが、フリーメイスンリーについての基本的なFreemasons for Dummiesレベルの内容を理解してから書かれると全く違ったものになるのではないかと思うのですが、なかなか日本のフリーメイスンリー関連の書籍の浸透度が明らかに足りないというところで、結果的に赤間剛氏のようなマスコミ出身者の偏っているとはいえ偏執的な情熱を感じさせる著作の方が内容の充実さや面白さという点においても段違いのものになって来るというところはあるのだと思われます。
まあブラザーダン・ブラウンシリーズやその他の最近の日本のフリーメイスンリー関連の出版に共通するものですが、極めて冷静な態度や姿勢を貫いて、客観的な記述に軸をおいたものの方が、結局は本質的な理解に繋がるという経験的なものもあるのだと思います。陰謀論を交えた内容を読んでそのままロッジに来る人がいかに素早くフリーメイスンリーから離れるかというのも歴史的に恐らくこの本の内容のようにうんざりするほど感じさせられたのだと思われます。

まあ横浜ロッジやその他の日本のロッジに訪問する際に必ずしも必読の内容とは思えませんが、実際ロッジに行けばメンバーは皆アメリカ人ばかりという現実に直面するわけで、何度かロッジに行ったあとには必ず読みたくなる本、またはさらに深い内容を知りたいと思ったら最初に読んでおきたいと思う本ではあるかと思います。特に横浜ロッジの場合にはこの本に書かれたようにブラザーマッカーサーの写真が象徴的に置かれていて、私としては隣にある東京大空襲を立案したブラザーカーチス・ルメイの写真の方がインパクトがあったのですが、まあそれとまた東京スカイツリーの仏塔としての意味なんかも出てきたりするのでしょうが、そういう書かれた内容を追認する意味でも横浜ロッジに訪問するつもりの方は読んでおくとよいかもしれません。
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(実際にロッジにある写真は上のものとは若干異なります。さすがにインターネットには出てきていないようです。)
追記:詳しい書評のページがありましたのでリンクしておきます。
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