2013-05-01 20:29 | カテゴリ:ドイツ・オーストリア
ジャンル:ニュース テーマ:フリーメイスンリー
ええとまずこの内容はこのブログの中で最も難しい内容です。
このブログの内容が難しいのではなく、まずこの素材とした本が非常に難しい本であり、恐らく難しすぎてこれまで日本語訳が出なかったという事と、難しすぎるがゆえにこれまで幾多の陰謀論が唱えられてきたというところだと思います。

秘密結社イルミナティ入会講座<初級篇>秘密結社イルミナティ入会講座<初級篇>
(2013/01/16)
アダム・ヴァイスハウプト

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本日2013年5月1日は1776年5月1日にドイツ、バイエルン州インゴルシュタットでブラザーアダム・ヴァイスハウプトが秘密結社イルミナティを結成してから237周年な訳ですが、はっきり言って本日この本を読了したままの状態でこの本についてブログに書くというのはかなり厳しいものがあります。
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しかしまあ課せられた使命としてできるだけ概要について触れていこうと思います。
まずイルミナティについてのウィキペディアの解説をコピペします。

イルミナティ(英: Illuminati)は、現実の歴史、およびフィクションに登場する秘密結社の名称。
日本語では啓明結社、パヴァリア啓明結社、光明会とも訳され、澁澤龍彦『秘密結社の手帖』ではパヴァリア幻想教団と訳された。
イルミナティとは、ラテン語で「光に照らされたもの」を意味するが、後に宗教的な活動から「啓蒙、開化」をも意味するようになる。近世以降、この名前で呼ばれた秘密結社が数多くある。グノーシス的要素やテンプル騎士団、シオン修道会、アサシン、フリーメイソンとの関連等を持つとされる。
陰謀論においては非常に人気があり、現在でも密かに世界へ手を伸ばし影響を与えている影の権力であるとされる。ただし、日本ではそれほど有名ではなく「ユダヤの陰謀」や「フリーメイソンの陰謀」などの表現に置き換えられていることが多い。フリーメイソンと混同される場合もしばしばあるが、フリーメイソンとの関連性は低い。
単にイルミナティと言った場合、後述のアダム・ヴァイスハオプト主宰のものを指す場合が多いが、その後に復興運動があったとは言え、その本体の活動期間は実質8年間であり、陰謀論の主体としてはユダヤやフリーメイソンと比較して説得力に欠けるという側面もある。
バイエルン王国で1776年に、インゴルシュタット大学の実践哲学教授アダム・ヴァイスハオプトが啓蒙主義的な Perfektibilismus(人類の倫理的完成可能説)を謳い、Perfektibilisten の同盟をつくり、のちに、イルミナティと改名した。原始共産主義を志向する側面と、内部の位階制の側面が同居している。ヴァイスハオプトからのキリスト教批判はあるが、それは倫理的完成へと向けるもので、他教への転向などを訴えるものではなく、ユダヤへの関連で語ってはいない。最盛期には各国に支部が置かれ、会員は貴族、大富豪、政治家、インテリなど2,000人に及んだという。1777年、ヴァイスハオプト自身もフリーメイソンになっており、並行してフリーメイソンだった者も多かった。
通説では1784年にバイエルン王国がフリーメイソンリー、イルミナティを含むすべての秘密結社を禁止するまで続いた。1785年にローマ教皇・ピウス六世はイルミナティがカトリックの教義になじまないと明言し、異端とされて、結社としての活動は1785年に終わった。
イルミナティの英語表記「illuminati」を逆にし、「itanimulli」とし、「http://www.itanimulli.com/」と、アドレスバーに打ち込むと、アメリカ国家安全保障局(NSA)につながる。

まずウィキペディアの内容としてこの本と違いがあるのが実践哲学教授というものですが、実際に恐らく実践哲学という講座というのは未だかつて存在しないと思われます。この本によれば教会法の教授という事で、当時あった世俗法のローマ法に対して教会法はカトリックの法を意味し、すなわち神学者であったという事です。そもそも父親がインゴルシュタットの法律学の教授であったそうで、彼が5歳のときに亡くなっているという事で、恐らく相当優秀であり、まあ一言で言うと血統も才能もともに天才という名にふさわしい人物であり25歳で教会法の正教授になったという存在という事でしょうか。ブラザーアダム・ヴァイスハウプトは正式にはJohann Adam Weishauptであり、1748年2月8日に生まれ1830年11月18日に亡くなったそうです。基本的にカントがケーニヒスベルク大学の哲学教授となったのが1770年だそうで、その後のいわゆるドイツ観念哲学の始まりともいえる「純粋理性批判」「実践理性批判」「判断力批判」が1788~90年に出版されており、1776年のイルミナティ結成の際にはブラザーアダム・ヴァイスハウプトが28歳であり、同年にアメリカ独立宣言が発布され、さらに1789年にはフランス革命が勃発し、ブラザーモーツァルトがフリーメイスンリーに入会するのが1784年12月14日であり、1786年5月1日フィガロの結婚初演で、1791年9月30日魔笛初演で、12月5日亡くなるという時代です。

ブラザーモーツァルトを引き合いに出しましたが、同時代の音楽の分野の天才として名前を出した存在であり、恐らく実践哲学という分野を出すのであれば同時代の実践哲学の天才というのがこの陰謀論で有名なブラザーアダム・ヴァイスハウプトになるのだと思われます。どちらもヨハネの名を冠している事が彼らの人生と業績を表しているかもしれません。解説の副島氏は誕生日が5月1日のようですが、まあ一応訳された本文を全て読んで概観してみると、副島氏はこのブラザーヴァイスハウプトの考え、この本の内容を理解していないようです。

時代背景として色々挙げましたが、1776年にイルミナティが結成され、翌年の1777年にブラザーヴァイスハウプトはフリーメイスンとなったそうで、この本が出版されたのが1787年だそうです。イルミナティ結成以前に時代の趨勢と彼の出自から彼自身が極めて精緻に実際の秘密結社であったフリーメイスンリーやそれの類似組織、上位位階などのシステムについて深い知識を有していた事があるかと思われます。この本の多くの部分は実際の組織の運営法や支部同士の関係や上位位階の運営法、また実際の秘密結社の理念や有効性、実際の会員の役割や必要とされる能力などについて、全人類の幸福実現という理想を目標として精緻に解説しており、そのベースとして神学論としてカトリックの三位一体論やプラトン主義、新プラトン主義について全面的に批判を加えており、絶対的な理性への信奉がそれら全てに通じる前提として勧められており、それらが秘密結社の活動の原動力であり、実践的な社会活動の行動原理であると極めて理論的に述べられています。単純にこれらの組織の行動原理や行動理念は極めて近い存在としてフリーメイスンリーの上位位階、特にスコティッシュライトに引き継がれていると想像されますし、わたしの知る限りまさにそこの真髄であるかと思います。普遍的にはブルーロッジや、ひいてはロータリークラブやライオンズクラブ、赤十字やボーイスカウト、国際連合といった友愛団体や友愛精神を引き継ぐ組織全てに共通する行動原理、行動理念として存在するかと思われます。(もちろん公的にはイルミナティの理念自体は反キリスト教的でありフリーメイスンリーの理念として同一ではありません。)

全ての宗教や哲学、その他学問や経済活動や集団組織が理念として全人類の幸福実現にあるとするならば、それらの極めて実際的な実現の過程、方法論、行動指針を示したものがこのブラザーアダム・ヴァイスハウプトの著したイルミナティという組織に関する著作であり、そこに含まれる理論を実際に修正しつつ運用しているのが現実社会であるかと思われます。長い文章ではないので読んでみればわかると思いますが、ほとんどの部分は基礎的な哲学知識が必要と思われ、必要とされる読書もほとんどがカント以前の哲学神学関連の書籍であり、聖書の通読はもちろんユダヤ古代誌も全て読みさらにその後のグノーシス主義を含んだ教会の神学の主要な著作、ソクラテス、プラトン、アリストテレスなどギリシア・ローマの著作を押さえてさらにその後の新プラトン主義について考察を加えて全面的に批判するだけの理解力をもたないと理解できないようです。私もかつてプラトンの著作「国家論」や「ソクラテスの弁明」など読んだ事もありますが、ほとんどまともに理解できませんでしたし、その後のカントやヘーゲル、ショーペンハウエルといった著作は読んだ事もありませんが、孔子の「論語」や老子の「老子」などは読んだことがあり、そういう経験から言えば、こうしたブラザーアダム・ヴァイスハウプトの実践哲学というスタイルは非常に有益であり秘密結社という概念とも実際のフリーメイスンリーなどの組織を通じて実践しうる理論であるのではないかと思われました。

実際のフリーメイスンリーの活動について、啓蒙活動であるとか、個々の人間を道徳的に高める活動とか、お互いにお互いを道徳的に高めるのが目的とか、交流を通して社会を啓蒙していくとかありますが、そういう活動の実際の理論的な部分を極めて教育的に抽象的に無駄無く表現しているのがこれらイルミナティ関連の著作であり、前にも述べましたが、啓蒙活動の実践のための行動の理論書がこのブラザーアダム・ヴァイスハウプトの著作であるかと思われます。
副島氏の紹介から出版につなげた労は非常に素晴らしいかと思いますが、もちろんこれらの抄訳をなし得た訳者の方々の真面目な哲学知識がこの訳本の意義ほとんど全てだと思われますので、それらについて賞賛を贈りたいかと思います。

つまり5月1日がイルミナティの結成日として重要とされるのは、そのイルミナティの行動綱領とされる、これらブラザーアダム・ヴァイスハウプトの著作が実践的で極めて精緻な理論書であり、行動する哲学として現代のフリーメイスンリーを初めとした友愛団体の活動に繋がる賞賛される哲学理論であるからなのだと思われます。イルミナティとはすなわち通常では認知しえない陰謀論でしか理解できないレベルの人類の幸福に関する行動する哲学理論、そういう概念で良いかと思われます。
私も宮沢賢治の「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福は あり得ない」という文章を知っていますが、まさにその理想論をそのまま実現するための方法論がイルミナティの理論であり、現代人が知るべき哲学書の部類だと思われます。もちろんフリーメイスンリーに関わるのであれば必読なのだと思われます。

もちろん入門書としては難しすぎます。哲学書はそういうものです。
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